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【日本語談義】 ~  「やることだ」vs「やるものだ」

中国人のお嫁さんとの交流を描いたエッセイ漫画、「月とにほんご 中国嫁日本語学校日記」で、妻の月さんから「やることだ」と「やるものだ」の違いを問われて、ダンナが絶句したという場面がありました。 これについて村中の考えを述べます。
***  「子供は勉強するものだ」 vs 「合格したいならよく勉強することだ」
こちら「~ものだ」の用例です。
「世の中そういうものだ」
「子供は外で遊ぶものだ」
「体は大切にするものだ」
一方、「~ことだ」は次のように使います。
「せいぜい勉強することだ」
「死にたくなければ、今すぐ身代金を払うことだ」
「ボケたくなければ、運動することだ」
*** 「~するものだ」は普遍的な正しさ、「~することだ」は、その場だけの正しさ。
「~ものだ」は、この世の一般法則を示しています。一方、「~ことだ」の方は、目の前の誰かの当面の行動に対し、指針、あるべき論を示しています。
どちらの言い方も、法則を示すことで命令の意を伝えるという、上から目線の嫌みな語法です。
しかし、どちらが意味として強く普遍性があるかというと、「~ものだ」の方です。「~ものだ」が世のあり方、当然の道理という「普遍的な」法則を示しているのに対し、「~ことだ」の方は、目の前の誰かという限定された個人の当面の行動について、「限定的な」指針、法則を述べているだけです。
*** なぜ「~するものだ」で、普遍的な正しさの意味になるのか。
では、なぜ「~ものだ」にはそのような強い意味が出るのでしょう。それは日本語の「物」の意味は、単に物体、thingではないからです。
「ものの怪」という言葉があります。「物に憑かれたような」という言い方もあります。日本語の「もの」とは、もともと「自分の意志では動かせない、自分とは別の何か」という意味です。2001年宇宙の旅に出て来るオブジェなどはまさに「物」です。
「自分の意志では動かせない」という意味が、転じて「法則」の意になります。一方、「事」は、「物」よりは、もう少し抽象的で一時的です。
「世の中そういうものだ」とは言えますが、「世の中、そういうことだ」とはいえません。
以上が、「~ものだ」と「~ことだ」についての村中の考えです。
使い分けの指針を述べるならば、「~ものだ」は普遍的な法則を表し、「~ことだ」はその場の限定的な指針を表す。どちらも法則転じて命令のニュアンスになる。上から目線の語法、ということになります。
(※ 参考文献:大野晋の一連の著作)

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