ある日、YOUTUBEで、ふとしたきっかけで、森昌子が歌う「たそがれマイラブ(大橋純子)」と「みずいろの雨(八神純子)」とを、聞いたところ、その戦車が全てを圧していくような、重量感のある歌唱に、あきれてしまいました。
いずれのの曲も、歌唱力抜群の八神純子、大橋純子という両歌手の代表曲であり、歌い抜くには豊かな声量と確かな歌唱力を必要とする難曲ですが、森昌子は、まったく苦にすることなく、余裕で歌っちゃっています。
身長154センチの小さな体から、まるでお寺の鐘をゴーンと鳴らすかのような大音声(だいおんじょう)が響きわたり、その迫力に、バックのビッグバンドの演奏がおもちゃの音楽に聞こえます。
今、音が出せる環境にある人はまずはこの二曲を聴いてみましょう。
(たそがれマイラブ) 0:50あたりのサビのところが大迫力
(みずいろの雨)
私にとって、森昌子といえば、「せんせい」を歌った、山口百恵と同世代の昔のアイドル歌手、途中からは演歌に転じて「悲しみ本線日本海」を歌った人というイメージしかありませんでしたが、演歌じゃない、普通の歌謡曲を歌わせても、これほどすごかったのだとは。知りませんでした。完全に認識を改めました。
それから、YOUTUBEで森昌子の歌うカバー曲を漁ったのですが、すると、ものすごい歌唱力のカバー曲が出るわ出るわ。
– 五輪真弓 「恋人よ」 ※ YOUTUBEのこの動画についていたコメント (「昌子さんは、どんな歌でも本家を凌駕される事が多いのですが、さすがに「恋人よ」は無理があるのではと思っていましたが(申し訳ありませんでした)完璧に自分の歌にされています。天性の綺麗な声で、気負わず媚びず、まさに天使の歌声です。やっぱり天才昌子-さんですね!?」)
– 美空ひばり「あの丘越えて」、昭和50年の美空ひばりとデュエット (※ ↑ ひばりさんからも「楽しみねえ、この人は」とほめられています)
– 小林幸子 「思いで酒」 ※ YOUTUBEのこの動画についていたコメント (「小林幸子さんを超えてはいけません」)
※ YOUTUBEのこの動画についていたコメント (「百年に一人しか生まれないような人間国宝級の歌手の森昌子が唄う歌を聴いて 当時の文部省のお偉い方々は何も感じなかったのでしょうか? 日本の”童謡唱歌の復活”の素晴らしいチャンスだったと思いますが。それとも日本の政治はまだまだ”物を申す”ことの出来ない仕組みの国なのでしょうか?今からでも遅くはありません,どうぞ歌手の森昌子を文部科学省に呼び出して下さい。 ”大事は小事より起こる”?)
いずれのカバーも素晴らしい歌唱です。そして、それぞれの動画についているコメントが大変に興味深い。文面から感じられるのは、あたかも「森昌子という戦車に乗って、他を圧していけるような全能感」です。何かの動画には、「もし昌子さんが、今、ドリカムやMISIAを歌ったら、おそらく本家は真っ青になるでしょう」というコメントされていました。別に、戦いじゃないので、がんばって本家を真っ青にさせる必要もないのですが、でも、森昌子を聞くと、何だか、昌子ちゃんに色々な歌をカバーしてもらい、本家をなぎ倒してほしいような気持ちになるのですね。昌子ちゃんなら勝てる、こちとら、手札はロイヤルストレートフラッシュだ、大三元だと、なんだか気が大きくなってしまうのです。 こちら、都はるみ本人とデュエットする「好きになった人」ですが、これはなかなかすごい。森昌子の迫力に、隣の都はるみ本人が「まいったなァ」という顔になっています。
森昌子さんには「歌戦車」という形容がふさわしいのかもしれません。戦車のように大迫力の歌を歌うということではなく、本人が戦車なのです。それに載れば、ゴゴゴと平原をばく進できるのです。女性に向かって戦車とは、ご本人が読まれたら、あまりな形容かもしれませんが、とにかく実力と迫力は並々ならぬものがあるといいたいわけですので、どうかお許しいただければと思います。
また別の視点で見れば、森昌子は、歌手であると同時に、「楽器」であると言ってもよいかもしれません。森昌子さんは、すご~く上質の良く鳴る、すばらしい楽器なのです。
森昌子が最も声量が豊かだったのは、10代後半~20代前半(70年代後半~80年代始め)のようです。その後、「悲しみ本線日本海」など本格演歌路線に入り、1986年には、いったん結婚引退。その後2006年に再びカムバックしましたが、当初はブランクもあり、声もなかなか出ないで苦しんだようです。しかし、もともと努力家の昌子さんは、あらためて努力と練習を重ね、最近はだいぶ声も元に戻りました。
村中は昨年11月に、歌を聴きにコンサートに行きました。昌子さんも今や50代ですが、思っていたより、声が良く出ていて、非常に楽しめました。個人的には、唱歌「ふるさと」がよかったですねえ。「う~さ~ぎお~いし」が発音がキレイだったなあ。
会場は、60代、70代、80代が中心で、まわりを見渡す限りでは、村中と同年代(あるいは年下)の人はいませんでした。森昌子さんは、デビュー当時からからご年配の方に人気があったようで、リサイタルのライブ盤レコードなどを聞いても、「おばあちゃん、とても70歳には見えません。69歳のようです」などと客席をオヤジギャグでいじっています。昨年のコンサートの途中では、ファンがステージに押し寄せ、花束のみならず、お茶やお米など日用品の入った紙袋を手渡す場面もありました。
今年1月14日(土)には、「森昌子 with 東京室内管弦楽団」というコンサートがあります。最良の楽器でもある森昌子が、管弦楽団と共に音楽をつくるという、当たればすごく当たりそうな企画です。村中としては、楽しみに会場に向かいたいところです。
参考資料
本家、五輪真弓の「恋人よ」 ↑ これを聞いて思いますが、「聞いてて冷え冷えとする」、「失恋の悲痛」などの表現では、やはり五輪真弓です。というか、森昌子の恋人よは、あんまり寂しそうではありません。でもよいのっです。個人的には、森昌子の唄は、楽器として聞いているので、「女の情念」とか「悲痛な感情表現」のようなものは求めていません。そういうタイプの人じゃないと思うんですよね。
美空ひばりのカバーした「恋人よ」
おまけ。ものまね10連発 ※ 森昌子は物まね上手としても有名でした。
最後は、「せんせい」で締めることにします。今聞いても、やっぱりいいですね。