オシャレと恋愛と芸術とホラーとパンフォーカスを混ぜるとこうなるという映画を観ました。
20世紀初頭の有名服飾家ココ・シャネルと前衛作曲家イゴール・ストラヴンスキーの不倫愛を描いた、『シャネル&ストラヴィンスキー』という映画です。
黒と白のモノトーンを基調にしたシャネルの別荘をはじめ、大変に美麗なセットを、ゆっくりとロールするカメラワークで撮っていく美しい映像が特徴の映画です。
映画前半では、シャネルが「わたしの別荘に来て作曲に打ち込めばいい」と口説いて、結局、ストラヴィンスキー夫妻と四人の子供達を、別荘に招きいれて、住まわせます。この時点では、シャネルとストラヴィンスキーはまだ関係していません。
ここから、観客は、奥さんが一つ屋根の下に住んでいるのに、いったいいつどうやって関係が発生するのかとハラハラしながら見守るわけですが、その過程を描く前半1時間のカメラワークや編集は、無人の廊下を静かにカメラがクローズアップしていったり、完全にホラー映画のそれでした。
シャネルとストラヴィンスキーのただならぬ関係に気づいた奥さんが途中から、静かな生き霊のように変化していきます。郊外にある広大な別荘に閉じ込められたままストーリーが進むところとか、ブランコに乗った子供が静止して正面を向いているカットとかは、うわあ、これじゃ、スタンリーキューブリックのシャイニングではないかと思いました。
シャイニングは、広大な別荘の中で、芸術家の夫であるジャックニコルソンが、別荘に潜む魔性に魅入られていき、妻がそれに抗う話でした。
このシャネル&ストラヴィンスキーは、芸術家の夫であるストラヴィンスキーが、別荘に潜むココシャネルの魔性に魅入られて、それに妻が抗う話なので、ストーリーの構造が同じです。
超怖いシャイニングのシーン(グロはありません)
(↓ こちらは、シャネル&ストラヴィンスキーの中の「生き霊と化していく奥様」です)
監督のヤンクーネンがこの映画を撮るにあたり、いろいろな点でスタンリーキューブリックを意識していることはまず間違いないと思います。
このカットとか照明のかんじがキューブリックぽいです。
。この辺のカットもキューブリックぽい。とくに右下とか。
この映画の後半で、シャネルの部屋が写ったときは、「あ、2001年宇宙の旅の『あの部屋』だ!」と思いました。
(2001年宇宙の旅の「あの部屋」)
この映画は、ココシャネルとイーゴルストラヴィンスキーという実在の人物を使っているだけに、脚本に自由度はありません。ストーリーそのものは何ということもありません。ただただ雰囲気を楽しむ映画です。
村中としては、アールデコと不倫とオシャレとシャイニングと2001年宇宙の旅を混ぜるとこうなるんだなあと興味深く見ました。
※ 以下、シャイニングと、シャネル&ストラヴィンスキーの予告編を並べときます。予告編だけだと何が似ているのか良く分からないかも知れませんが、本編を見比べると、けっこう共通点が良く分かると思います。
シャイニング 予告編1: 「世界一怖い予告編」として有名。 http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=Str81Wp_VI8
シャイニング予告編2:
※ シャイニング、また観たくなりました。これは絶対ブルーレイの透き通ったキレイな映像で観たいです。