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景気対策が成功すると、景気はかえって悪くなる

 薄型テレビで一世を風靡した某電機メーカーは、その後、経営危機に陥り、一時は台湾メーカーの出資を仰ぐ寸前になりました。また、日本最大の電機メーカーも、数千億円単位の赤字を2年連続で計上しました。

一方、韓国の電機メーカー、サムスンの業績は好調です。日本の電機メーカー全ての利益を合わせたのよりもサムスンの黒字の方が大きいそうで、びっくりです。

なぜこんなことになったのか。多くの雑誌では、「日本の電機メーカーにグローバル戦略がなかったからだ」、「利幅の薄い薄型テレビ増産のために無理な設備投資をしたからだ」のように、多くは電機メーカーの「経営判断の誤り」「奢れる者は久しからず」という論調で語っています。

村中も以前はそうなのかなと思っていました。

しかし、経済学者、吉本佳生は、それらの理由は二次的なものでしかない。本当の理由は、薄型テレビの普及を後押しするための政府の政策、すなわち景気対策が【大成功したこと】が、その後の電機メーカーの凋落の最大の原因であるいいます。

これは驚きの結論です。政府が景気対策をしなかったことではなく、また景気対策に失敗したことではなく、景気対策に成功したことが危機の最大の理由だというのです。

実は薄型テレビは、高度経済成長期を含め、日本の電化製品の中では普及スピードが最も速かった製品でした。テレビよりも冷蔵庫よりも携帯電話よりも、薄型テレビの方がスピーディに普及したのです。

しかも、テレビ、冷蔵庫、携帯電話は、それまで持っていなかった物を新たに買うという形での普及でしたが、薄型テレビの場合は、すでに全家庭にブラウン管テレビが入っていたのを追い出す形での導入です。


この驚異的な普及スピードを支えたのが、政府による地デジ化やエコポイントなどの施策でした。アナログテレビはもうすぐ使えなくなりますよ。買い替えなさい。いま買うとエコポイントで安くなりますよ。省エネテレビに買い換えるのは環境のためにも良いことですよ。買い替えなさい。この政策のおかげで、日本の家庭にあった高品質のブラウン管テレビは、一気に薄型テレビに置き換わりました。

つまり、政府の景気対策は成功したのです。

しかし、この景気対策の大成功がが、そっくりそのまま、その後の電機メーカーの凋落の要因となったことが、吉本佳生の著書、「これから誰に売れば儲かるのか」に書いてあります。

大きくは、「商品の急激な普及(急激な需要増)は、必ず供給増大(設備投資)と価格競争を招く」ということです。

言われてみればなるほどで、急激な需要増が起きているのなら、それはもう売らなきゃ損損なので、供給を強化します。具体的には工場に設備投資します。

特に薄型テレビの場合は、 地デジやエコポイントなどの国策支援を電気メーカーも気がついていたでしょうから、ある種の「使命感」をもって供給増の努力をしたかもしれません。つまり、みんなが薄型テレビを買おうとしているのに、店頭に商品がないのでは、自社も儲からないし、国もがっかりするわけですから。

しかし、同じ事は薄型テレビメーカーの全社がやりますから、全体の供給力はどんどん上がり、供給過剰になる。そうなれば当然、価格競争が始まります。

価格競争なんてバカなことに参加しなければいいじゃないかというのは外野の言い分で、いったん始まった価格競争からは絶対に抜けられないことが、この本では囚人のジレンマの理論を使って、精緻に論証されていました。



くわしくは、同書をお読みいただければかと思います。村中は、読み進めるにつれ口あんぐりになり、目から鱗が次々に落ちていきました。


テレビニュースで、街角で政府に期待することを聞けば、誰もが「景気対策」と答えます。アベノミクス でも3本目の矢、成長戦略が期待されています。

村中も以前はそういうことに期待していました。

しかし、今は考えが変わりました。だって、政府の景気対策が【成功すると】、景気はかえって悪くなるのですから。


この逆説がなぜ成り立つのかは、「これから誰に売れば儲かるのか」を読んでみてください。

ちなみに、普及率が急でなかったおかげで値崩れがおきなかった例として、ウオシュレットの例が挙がっていたのが興味深かったです。


また、この本では、題名のとおり、では今後、どの市場を狙えば成功するのかも書いてあります。また、最近、話題になっているビッグデータについては、「ビッグデータをフル活用した企業はコケる可能性が高い」など刺激的な言説もありました。

村中は吉本さんの本は出たら必ず買うことにしていますが、この本は、題名があまりに露骨で買いそびれていたのですが、内容はすごくいいです。ご一読をおすすめします。

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