そこで今回は、あるKPIが少なくとも「よく考え抜かれたもの」「いい加減でない、確かなもの」であることを担保する(見抜く)にはどうすれば良いか、そのノウハウを書きます。
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村中が小学生の頃は荷物は小包にして郵便局で送るものでした。親戚に荷物を送るからと、親と一緒に近所に郵便局まで重い小包を持っていった記憶があります。
ところが1975年、ヤマト運輸が宅急便というサービスを開始しました。そのサービスでは、何とドライバーが自宅まで荷物を取りに来てくれるというではありませんか。なんと有り難いことかと思うと同時に、個人の家までドライバーが荷物取りに来て、こんなんで採算合うのかなと子供心にも思いました。
宅急便の創設者である当時の小倉社長はこの問題に対し「荷物の密度を上げれば解決する」と考えていました。営業所エリア内の取り扱い荷物の数を増やし、トラックを空で走らせないようにすれば、もともと個人向け荷物は法人向けよりも1キロあたりの単価は高いのだから、いったん損益分岐点を超えれば後は十分な利益が確保できる、そう考えて判断指標(KPI)を「荷物の密度」に置いたのです。
しかし小倉社長がすごいのはここからで、社員には「荷物の密度を上げろ」と言ったのではなく、「サービスが先、売上げは後」と指示したことです。
「これから売上げのことは特に言わないが、サービスレベルについては厳しく指摘していく」と社内に告げたそうです。サービスさえ良くなれば、家庭の主婦に指示され扱い荷物は増え、荷物の密度は上がる、そうすれば売上げは自然に上がると考えたわけです。
「車が先、荷物は後」という指示も出しました。これは「営業車は、取り扱い荷物が十分に増えてコストが回収できる見込みが立たない限り増やせない」と言い張る管理職に対し、そんなことを言っていたらサービスレベルが上がらない、まず営業車を導入しなさい、そしたら荷物は後から増えて売上げも上がりコストも回収できるからと言いました。
小倉社長の発言のすごいのは「二番」を設定していることです。「サービスレベス最優先」「顧客様第一経営」なら誰でも言えるのですが、「サービス一番、売上げ二番」はなかなか言えません。
KPIは「○○1番、●●2番」という言葉で表すのが理想です。やってみると分かりますが、よくよく論理的に考えて自分の中に確かな軸を持たない限り、「○○1番、●●2番」という表現は決してできません。
今日の結論、自分が考えたKPIの良し悪しを判定するには「○○1番、●●2番」という表現ができるかどうかで見分けられます。