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「今日は、感動させていただきました」について。

 去年の紅白歌合戦では、司会の堀北真希さんが、初司会をして感極まり、「感動させていただきました」と発言したそうです。


これに対し、ある人が、次のようにツイートしていました。

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それにしても紅白歌合戦の堀北真希さんの「感動させていただきました」って言葉は凄かったな。感動を、「させて」「いただく」だぜ。日本語として間違っているとか、そんなレベルを超越している。 
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堀北さんは、NHKの番組司会者として、丁寧に喋ろうと思い、「感動させていただいた」という言葉を選びましたが、ツイートをした人は、それに、途方もなく違和感を感じているようです。

最近は、何でもかんでも「させていただく」をつけるのが流行しています。「お伺いさせていただく」、「質問させていただく」、「出張させていただく」、「おつきあいさせていただく」、「結婚させていただく」、そして「感動させていただく」などなど…。

村中は、これらの言葉遣いは、間違っているとまでは言わないまでも、不適切だと考えています。この稿では、なぜそう思うのかを書いていきます。

***「していただく」 vs  「させていただく」

「~していただく」という敬語があります。「先生に執筆していただきました」「●●さんにお越しいただきました」のように使います。

「いただく」とは、貴人から何かを下賜される時、ひざまづいて頭を垂れ、両手を頭の上に差し出して、それを受け取る様を指します。(「いただき」は転じて「頂上」「高いところ」の意味にもなります。「山の頂き」など)

「先生に執筆していただきました」の場合、執筆しているのは「先生」ですが、一方、それを「いただいている」のは話者です。

「~していただく」とは、誰かが何かをした、その行為を、私は恭しく受け取りますという構造の敬語です。

では、「~させていただく」はどうでしょうか。まず「させる」は、「する」の使役型です。「労働させる」「勉強させる」「来させる」のように誰かに何かを強制するときに使う言葉です。

「させていただく」と「していただく」は形がよくにています。「~していただく」は、「誰かが何かをした、その行為を、私は受け取る」という構造ですが、「させていただく」は、「誰かが私に何かをさせた。その「させていること」を私は恭しく受け取る」という作りです。ややこしい、まわりくどい構造の敬語です。

***「させていただく」は、敬意と責任回避が同時に実現できる便利な言い方

クライアントに営業訪問した席上で、「ではご説明させていただきます」と言うとき、これは、「この説明は、私が自由意志でするものではありません。私めにそんなことをする権利はありません。この説明は、あくまで私ではない誰か(何か)が、私に『させている』ものでございます。私は、その『させられている状況』が苦痛どころか、むしろ喜びです。この状況を、謹んで受け取る(いただく)次第です」という敬語構造です。

「誰か(何か)が自分にこれをさせている、それを自分は受け取っている」という、ややこしく、まわりくどく、マゾヒスティックで、卑屈な敬語です。

「結婚させていただく」という言葉を聞くと、イラッとします。「結婚は、自分がしたくてするんだろ。誰かにさせられているわけじゃないだろ。そんな卑屈になるなよ。おめでたい話しなんだからもっと堂々としろよ」と感じるわけです。

「祝日はお休みさせていただきます」という言葉にもイラッとします。「休むと決めたのは、お前だろ。誰かに休まされているわけじゃないだろ。逃げんなよ」と思うわけです。

「させていただく」という言い方には、「すると決めたのは自分じゃない(誰かがさせているんだ)」という言語構造があります。つまり敬意を示しながら同時に責任回避もできるという、一石二鳥の敬語です。

この責任回避の魅力が、多くの人が「させていただく」を連発し、ついには堀北真希さんが、「感動」という、自発的に、自然にわき起こる感情についてさえ、「感動させていただく」という卑屈で表現をせざるをえなくなった理由だと思います。感動にまで、責任回避する必要はないでしょう。

このように「させていただく」というのは、本質的に卑屈・卑怯な言葉なので、あまり多用しない方が良いと考える次第です。

※ 「させていただきます」は、「本当に誰かに何かをさせられている場合」なら使って良かろうと考えています。たとえば、村中は、事例の取材に行って挨拶するときに、「本日、取材をさせていただきます、村中と申します」と言うことがありますが、これは自分の中では、「ま、よかろう」と思っています。実際に、その場の取材は、クライアントが村中に、お金を払って「させて」いるものだからです。

「今日は、感動させていただきました」について。” への1件のコメント

  1. とても面白く読ませて頂きました。
    放送会に位置する輩でありながら公然とこのような言い回しをするなんて呆れます。
    「それはちょっと…」と言ったら「今はメジャー」だとか…
    文法混じえて痛快な切り口にスッキリ!!
    ありがとうございました。

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