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事例作文術 ~ 文章に数字を入れることのもう一つの効用

導入事例の制作ではよく、文中に数字を入れるのが良いといわれます。「大きな効果があった」のような定性表現ではなく「30%向上」のような定量表現の方がインパクトがあるというのです。

なるほど村中もこの意見には賛成ですが、しかし文章中に数字を入れることについては「導入効果の表現」のほかにもう一つ重要な効果があると思っています。

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最近、ネットでこれは上手い!という文章を見ました。

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5日目には、エニセイ河岸でも、大きな町の一つイガルカ港に上陸しました。イガルカ市は人口1万人で、クラスノヤルスクから1744キロ、北極圏(北緯66度33分)より163キロ北方にあり、シベリアで最も大きな海港でもあるそうです。と言うのは、ここまでエニセイ河をさかのぼって北極海から海洋船が寄港できるからです。イガルカ市はスターリン時代永久凍土帯に、囚人労働や強制移住者達が作らされた舗装道路や高層建築(4、5階程度が多いが)のあるロシア人の町です。http://homepage2.nifty.com/enisei2580/eniseycruise2.html
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一読すると「フツーに書いているだけじゃん」と思うかもしれませんが、村中は「これはなかなか書けない」と思いました。

この文章の特徴は数字が多いことです。「クラスノヤルスクから1744キロ」、「北極圏(北緯66度33分)」「高層建築(4、5階程度が多いが)」のように数字が随所にちりばめられています。これら数字群が、文章全体の質を上げています。

ためしにこの文章から数字をそっくり抜いてみましょう、どうなるでしょうか。

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次はエニセイ河岸でも、大きな町の一つイガルカ港に上陸しました。イガルカ市はクラスノヤルスクからはとても遠く、北極圏より北方にあるほどで、シベリアで最も大きな海港でもあるそうです。と言うのは、ここまでエニセイ河をさかのぼって北極海から海洋船が寄港できるからです。イガルカ市はスターリン時代永久凍土帯に、囚人労働や強制移住者達が作らされた舗装道路や高層建築のあるロシア人の町です。
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たいして変わらないじゃんと思うかもしれませんが、村中としては「深いところで大きく3つの価値が減損した」と感じました。

まず、読者にこの先を読んでやってもいいと思わせる力、つまり「読ませる力」が減じています
数字が多い方の最初の文章は、読んでいて「これは適当に書かれているものではなく、手間ひまかけて読者のために真剣に書かれたものだ、これなら自分の時間を割いて先を読む価値がありそうだ」と思わせます。一方、数字を無くした方の文章は「個人の感想が適当に書いてあるだけかな」という印象になり、先を読む気力が湧きません。

次に、数字の少ない後者では「文章の格」ともいうべきものが減じています。数字をきちんと書く方が、文章全体に、良い工芸品が発するような、えもいわれぬ「格」が感じられます。人はやはり「格」のあるものに惹かれるので、文章もそれに越したことはありません。

もう一つ減じているのはエンタメ性、おもしろさです。やはり「北極圏」だけよりも「北極圏(北緯66度33分)」の方が何となく面白い。別に66度33分と言われてもどこのことなのか本当は分からないのですが、それでも数字が入っていると文章に不思議な魅力が醸し出されます。

さらに同じ紀行文から例を引いてみましょう。前者のオリジナル版と、数字を抜いてリライトした後者とを読み比べれば、この文章の魅力の根源が数字にあることが分かります。

(原文)
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クラスノヤルスクからイルクーツクまではシベリア鉄道で18時間ほどです。ウラジオストックまで4日間半もかかるのに比べて、あっと言う間の距離です。それで、4人用コンパートメントの寝台車(2等車)ではなく、寝棚が縦横にぎっしり並んでいるオープン寝台車プラツカルタ(3等車)のチケットを買いました。チケットには、列車の出発時間は、モスクワ時間3月11日20時40分と書いてあり、それは、クラスノヤルスク時間で12日0時40分なので、時間的にもまずまずでした。
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(数字を取ってリライトしたもの)
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クラスノヤルスクからイルクーツクまではシベリア鉄道で1日がかりです。ウラジオストックまで何日もかかるのに比べて、あっと言う間の距離です。それで、コンパートメントの寝台車ではなく、寝棚が縦横にぎっしり並んでいるオープン寝台車のチケットを買いました。チケットには、列車の出発時間は、モスクワ時間の夜でしたが、それは、クラスノヤルスク時間で翌日深夜なので、時間的にもまずまずでした。
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このように数字の適切な多用は、文章の魅力を高める上で有効ですが、欠点があるとすれば、それは「めちゃくちゃ手間がかかる」ということです。
「チケットには、列車の出発時間は、モスクワ時間3月11日20時40分と書いてあり」「クラスノヤルスクから1744キロ」、「北極圏(北緯66度33分)」など、いちいち細かい調査が必要であり、やってみると分かりますが大変めんどうで、ついごまかしたくなります。しかし、そこを頑張って一手間かけると、他人がやらないことをやったことになり、文章の差別化が実現します。

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顧客事例の文章では、この紀行文のような形で本文に数字を多く盛り込むのは少々困難ですが、そのかわり村中が多用するのは文中に表を入れ込むということです。これにより「読ませる力」「格の向上」が実現します(「エンタメ性」は不明)。

また事例は紀行文と違い、商業実用文なので、読者が必要な情報に高速アクセスできるという「効率性」が重要ですが、表を使えばそれを実現できます。

 

(※ 表の例)

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しかし表を作ることは、やってみると分かりますが、特にインタビューで手間がかかります。「それは各拠点ごとにいくつですか?」「名前は何ですか?」「合計処理量は?」「配管長さは?」など5W1Hに関して抜けなくモレなく大量の質問をしなければいけません。あまり細かく長く聞いていると尋問調になりインタビューの雰囲気を損ねるので、テキパキと短時間で軽みをもって質問せねばならないので、それも大変です。

それだけ労力をかけて聞いても、できあがるのは表一枚。しかし、その一枚の表が文章全体の品質を大きく底上げしてくれます。

今日の結論、

「読ませる文章を書くには数字または表が有効(書くのは大変だけど)」

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