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ポジティブなキラーワードって有効なの?(2)

(前回からのつづき


前回は次のようなことを書きました。

キャッチコピーには、「ポジティブなキラーワード」を書くべきだ」と言われます。しかし読者にとってそのキラーワードとは、実は「他人の自慢話」にすぎず、あまり興味はもてない。人が関心を持つのは、原則、「自分に関係ある話」、読むとオレが(私が)トクする話である、と。

では読者に「お、これは自分に関係ある」と感じてもらうにはキャッチコピーで、どんな言葉を使えばよいのでしょうか。

キャッチコピーというと、プロのコピーライターが言葉の技術と感性を駆使して考える、大衆の潜在意識に訴えるような、短いながらもすごい一文!、のような印象があります。しかし企業を相手にするBtoB製品でそこまでの派手な能力は通常、必要ありません。とりあえずは「誰でもできる手堅い手法」を使えば、はじめの一歩としては十分です。

そのはじめの一歩とは何か。それは「相手の頭の中に、すでにある言葉を使う」ことです。

たとえばその事例を読む人(=見込み客)の業界で、いま「(サービスの)解約防止」が業界全体の課題であり、その業界の人は、自社の業務課題を「解約防止」という言葉で認知しているとします。ネット検索するときも「解約防止 対策 事例」などで検索しているとします。そうであるならキャッチコピーでも当然、「解約防止」という言葉を入れるのがよいでしょう。

見込み客は「解約防止」という言葉にアンテナが立っています。それは雑多な文字列を眺めていても、「解約防止」という言葉だけは自然と注目してしまう精神状態です。

ならばキャッチコピーに「解約防止」という言葉が入っていれば、たとえそれが凡庸なコピーであったとしても、「あ、解約防止の話だ」とまず認知し、その後、「だったら自分に関係ありそう」と思うでしょう。そうして事例パンフを手に取り(あるいはWebをクリックし)、本文を読みはじめてくれるでしょう。

こうした理路で、「顧客の頭の中にある言葉を使う → 関心を持ってくれる → 本文を読み始めてくれる」が実現します。


「解約防止」のような言葉は、コピーを考える側、売る側からすると、地味で、パッとしません。読んでいて高揚しない。だからもっと劇的に導入効果が分かる「派手でポジティブなキラーワード」を盛り込んで、気分をアゲアゲにしたくなる。

しかし、ここで注意すべきは「あなたが『解約防止』という言葉に反応しないのは、あなたが見込み客の属する業界の人間じゃないから」「あなたは売る側、『外野』の人間だから」ということです。

外野の人間の頭の中に、当然ながら「解約防止」という言葉はない。あるのは自社製品をほめたたえる言葉、つまり「ポジティブなキラーワード」だけです。

売る側のあなたは、そういう自社の商品、サービスが褒められている言葉を見るとグッと来ます。だって普段から自社商品をほめられたくてウズウズしているから。

しかし、買う側(見込み客)にとっては、あなたの商品へのほめ言葉は、とりあえず自分に関係ない、どうでもいい話に分類されます。そのポジティブなキラーワードは他人のペット自慢話ぐらいにしか見えません。いや、ペット写真ならかわいいのでまだ見られますが、事例にそうしたエンタメ性はないので、よけいに見る気がしません。

そんな読者の気を引くには、「読者に関係あると思える話」をもちかけるしかありません。

ちなみに前回から続けて本記事をここまで読んだ人の頭の中には、きっと「ポジティブなキラーワード」という言葉があらかじめあったのでしょう。そして、それを肯定的、よいものにとらえていたと思います。それを否定するような論調のこの記事のタイトルを見て、「なんだオイ、ずいぶん言ってくれるじゃないか」「理由を言ってみろよ」という感情が生じ、読む気力が生じ、ここまでの長い文を読み通せた、そういう理路かなと考えています。

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