導入効果を的確に書くには

IT製品の事例を書くとき、「導入効果を詳しく書くこと」が重要といわれています。しかし導入効果とひと口にいっても、製品ジャンルによって大きく変わります。「デスクトップ用簡易ツール」など小規模アプリケーションなのか、「仮想サーバ」などインフラなのか、「生産管理システム」や「ERP」など大規模システムなのかで、導入効果のあり方は大きく異なります。
ここでは、「IT製品の導入効果とは、つまり何なのか」を、製品の種別にとらわれず、普遍的に把握したいと思います。いったん根本原理を理解すれば製品が何であろうと導入効果を迷わず記述できるので便利です。またIT製品は無形商材の代表なので、その原理はコンサルティングなど他のソリューション商材の事例を作るときにも役立ちます。
筆者はこれまで何百本もIT事例を作ってきました。その経験に基づくと、IT製品の導入効果は次の3タイプに集約できます。

タイプ1.「効率化・コスト削減」
タイプ2.「属人性の低減」
タイプ3.「基盤の確立」

(つづく→)

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サンブルがすべて-2

IBMの担当者はウエハーを手にとって空中にポーンと放り投げました。薄いお煎餅のようなウエハーはヒラヒラ舞い上がり床に落ちましたが、割れませんでした。それを見て「よし合格、話を進めよう」となり、最終的に受注にこぎつけたそうです。
ここで思考実験です。ウエハーの営業では、「英語はダメで営業力も限りなくゼロ、しかし商品サンプルを持っていた」おかげで受注できました。これがもし「日本最高の法人営業マンで英語もペラペラ、だけど商品サンプルは持たせない」という条件だったら、果たして受注できたでしょうか。「日本最高の営業マン」なので口八丁で何とかしそうな気もしますが、商品を見せられないハンデは大きいので、あるいは受注できないかもしれません。
一方、「営業力はありません、でもサンプルは持たせます」という場合、トークがダメでもとにかく相手がウエハーを宙に飛ばしてくれれば、商品の良さが伝わり、結果として受注できる可能性は大いにあります。

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サンブルがすべて

高級車の代表である「ベンツ」のトップ営業マンによれば、成約を勝ち取る最も有効な方法は、見込み客の自宅の車庫にベンツの試乗車を入れることで、顧客は一度、自宅の車庫に入ったベンツを見るともう手放せなくなるそうです。
売る物に形があることは営業にとって大きなメリットです。元リクルートのトップ営業マンはこう言っています。
「営業トークがつたなくてもサンプルがそれを補ってくれる。『ちょっと手にとって操作してみてください』など試用できるものならなお良い」
――『法人営業バイブル』(大塚寿、井坂智博著)

つまり営業が未熟でも商品さえ見せられれば、その力でひとりでに売れてくれます。しかしソリューションのような無形商材は商品を見せられません。ではどうすればよいのでしょうか。
戦後間もなく日本の半導体ウエハー企業の営業マンが当時のコンピュータトップ企業だった米IBMに自社ウエハーを売り込みに行きました。渡米した営業マンはほとんど英語が話せませんでしたが、それを助けてくれたのが持参したウエハーの見本でした。(つづく→)

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相手から「事実」を聞き出す質問テクニック-3

第2の方法は「質問しないで推測する」。相手の回答をもとに常識的な線で推測します。「はい、そうです」となったら、「この話は面白くなかったな、と見切りをつけて次の質問に移ります。この第2の方法は、あれこれ推測を重ねるとしつこいと思われる危険があります。それを弱めるための第3の方法が「取材という立場に頼る」です。ちょっと根掘り葉掘りだなと思える質問をするとき「すみません、取材なんでいろいろ細かく聞かないといけないので」とか「読者にちゃんと伝えないといけないので」などクッション言葉を入れます。これにより、相手に「取材だったらしょうがないかな」と思ってもらいます。
事例取材の目的は、相手と意気投合することではなく「事実情報を引き出す」ことです。どうやればスムーズに効率的に事実情報を引き出せるか、事例取材中は頭をフル回転させる必要があります。

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相手から「事実」を聞き出す質問テクニック-2

では、普通に聞いたら嫌がられる話をどう引き出せばいいのでしょうか。大きく分けて3つの方法があります。
1つは、「質問しないで調べる」。これが一番良い方法です。IT製品の事例インタビューであれば、自社の営業担当者にヒアリングして、事例取材の前にインタビュー相手の事実情報を調べておくことは十分可能です。ここで聞いておくべきことは、いつ頃に問い合わせがあり、受注がいつで、稼働開始がいつで、受注金額はいくらで、納品したのは何と何と何のような無味乾燥な事実情報です。理想的には「取材前に事実情報の7割を知っている」ぐらいが望ましく、取材前のヒアリングは取材の一部と言えます。(つづく→)

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相手から「事実」を聞き出す質問テクニック

事実を聞き出せば確かに面白くなる。でもそんなに根掘り葉掘り細かく質問したら、相手に嫌がられるんじゃないか。それはまったくその通りです。実はそうした事態を回避するためにあるのが、質問テクニックです。
事例インタビューでの質問テクニックとは、「普通に聞いたら嫌がられる話を、どうやって引き出すか」ということです。これは「意気投合する技術」「人に好かれる技術」とは明らかに違います。もし相手に好かれたいなら、細かい質問は最初からしなければいいのです。(つづく→)

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数字に客寄せ効果があるのは事実-5

大きな音でラッパを鳴らせばとりあえず人々は振り向いてくれるでしよう。問題はその後で、ラッパを鳴らして終わりでは人々に失望されます。人を振り向かせたからには、必ず相手に役に立つことを言わねばならないのです。
「生産効率30%アップ」「試作期間半減」というのはラーメン屋の呼び込みと同じです。勝負は入店させた後、うまいラーメンを出せるかどうかにかかっています。つまり事例は、キャッチが派手なときほど本文が重要です。

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数字に客寄せ効果があるのは事実-4

電子メールがFAXより効率的なのは「当たり前の話」であり、読者(見込み客)には、30倍という数字キャッチの有り無しにかかわらず、既にわかっていることです。読者が関心を持つのはその先のこと「では、どの電子メールシステムを導入すればよいのか」「抵抗勢力を納得させるにはどう説明すればよいのか」という情報です。その疑問に事例の中で答えなければいけません。
「効率30倍」というキャッチコピーは客寄せのラッパにすぎません。(つづく→)

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数字に客寄せ効果があるのは事実-3

ただし、この場合は「30倍」で人目を引いたその後が大事です。「電子メールで30倍効率化」はそれだけでは「ありふれた話」であり、自社製品の相対優位を表現したことになりません。筆者が取り組むなら、事例記事の本文では、メールシステム〇〇は他社製品に比べて何がよいのかという「相対評価」を書きます。それ以外に「社内の抵抗勢力にどう対処したか」も書くでしょう。
FAXの代わりに電子メールを使うとなると、一般社員の業務手順が大きく変わります。しかし現場社員、特に年配の社員は仕事の手順が変わることを嫌います。電子メールを既に導入した企業がこの抵抗をどう乗り越えたかは、事例を読む見込み客が関心を持つ情報です。(つづく→)

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数字に客寄せ効果があるのは事実-2

この考えをある人に話したところ、「もし村中さん(筆者)が30年前に電子メールの事例を作るとしたら『FAXに比べて効率30倍』というフレーズを本当に使わないんですか?」と言われました。これはつまり「『30倍有効』というフレーズが無意味だという話は、理屈としてはわかった。だが30倍だぞ、30倍。本当にこの数字をキャッチコピーに使わないのか?」と聞かれているわけです。
このとき筆者は「いえ、使います」と答えました。理由は「当たり前だろうが誰でもできる話だろうが『30倍』という数字には確かに迫力がある。客寄せのために使わない手はない」というものです。(つづく→)

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