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販促会議で事例の予算を取る方法(3)

【売り方ではなく、買い方に注目する】

むかし日本海の素潜り漁の名人という老人にインタビューしたことがあります。「○○さんはなぜ素潜り漁が上手なのですか?」と質問したところ「海の中に何分潜れるかとか、そういうことはあまり関係ありません。私が他の人よりサザエやアワビをたくさん撮れるのは、この季節この天気この風向きでこの温度になれば、サザエもアワビも海底のここに現れるという、その通り道をよく知っているからです。それさえ分かれば、あとはその場所に潜って拾うだけのことであり造作もありません」という答でした。

つまり良い素潜り漁師の条件は、漁獲技術ではなく「相手(獲物)の知識をいかに多くもつか」にかかっているというのです。

これと同じことが販促施策の立案でもいえます。
販促施策を立てるときは、「どうやって売るか」を考えるより先に、まず自分たちの顧客はふだん商品をどう買っているのかという「買い方」を知る努力をするべきです。

「(自分たちが)どう売るか」に意識を向けると、「(自分たちの)思いや気分」が先行してしまいます。

そうではなく買う側である顧客の意志決定の経路、すなわち魚の通り道ならぬ「顧客の通り道」について、因果関係、ストーリーを以て念入りに想定、シミュレーションしましょう。

そのストーリーに対応させる形で、リストアップした「集める施策」「追いかける制作」の「実行する/しない」および「どの程度の重み付けで実行するか」を策定していきます。

これは購買に至る「顧客の通り道」の要所要所に、顧客が商品を買いたくなるような、あるいは買いやすくなるような仕掛けを設置するようなイメージです。

魚を取るために必要なのは、「あなたがどう釣りたいか」ではなく、魚はいつどこにたくさんいるのか、季節や天候の変化に応じて海中をどう移動していくのかという知識です。

同様に、販促施策を策定するときの根拠は、「御社がどう売りたいか」ではなく、「顧客はどう買っているか」の方であるべきです。


(※ この記事、次回へ続く)

 販促会議で事例の予算を取る方法(2)

(前稿からのつづきです) 


【リストアップした施策を機能別に二分類する】


BtoB販促では取り得る施策の選択肢はBtoCに比べ、そう多くありません。

まずはその「取り得る手段」をリストアップしてみてください(おそらく30個も出てこないはずです)。


では、次は列挙した「取り得る手段」を、「見込み客を集めるための施策」「集めた見込み客を追いかける施策」で分類します。

なおネット集客で重視される「ホームページからの問合せの獲得」は、ここでは「追いかける」に分類することにします。

(※ ここから先は話を簡略化するために、インターネット集客を例にしてお話しします。

またここから先は「追いかける施策」は文脈に応じて「盛り上げる」「しめくくる」という言葉で表現します



まずリスティング広告やSEOは、自然検索をしている人をサイトに誘引するための刻々なので、「集めるための施策」だということになります。


また「ホームページリニューアル」は「追いかける」方に分類されます。いくらホームページをキレイに回収したとしても、それは見込み客が「そこに来て、目で見ないかぎり分からないこと」であり、それ自体に集める力はないからです。


では顧客事例、導入事例はどちらなのか。これもまた「集める」ではなく「追いかける」「しめくくる」方になります。ホームページに事例を載せたとしても、それは来て見ない限りその存在にすら気づけません。つまり事例には顧客を「集める」という力はありません。


事例が担当するのは、集めた見込み客の「関心の増大(盛り上げ)」と「問い合わせ獲得(しめくくり)」だからです。


(※ なお事例は、問い合わせを得た後の、営業的クロージングの際の強力な参考資料として活用が可能です。営業的クロージングの場で使えるというのは、他の販促資料にない、事例ならではの特色です)。


ちなみに顧客事例が「集められないけど、盛り上げて、しめくくれる」ことの鏡像として、しめくくったりはできない」ということになります。

広告で集めて、ホームページ(含む顧客事例)で問い合わせを得る、両者は補完的な関係にあります。



【分類した施策について、やる/やらないを仮決めする】

前項までで、「取り得る施策のリストアップ」、「その施策を『集める』、『盛り上げる、しめくくる』に分類する」までを行いました。

ここまで来ると、「来期の販促計画の策定」は、ひとつの理論にもとづいて計算的に実行できます。その手順は具体的に次のようになります。

1.来期は「集める」「盛り上げる」のどちらに重きを置くか基本方針を決める。

2.その基本方針に準じる形で、リストアップした「取り得る施策」に「やる/やらない」の○×をつける。

3.やると仮決めした項目(○をつけた項目)に重み付け、優先順位をつける。

4.その順位に基づいて予算を割り振る。以上で販促計画の完成。


基本方針の策定については、

「今期は『集める』は、そんなにやらなくていいよ、集めた顧客を『盛り上げる』方に力を入れよう」

「いや、今、ウチに欠けているのは、集客量だよ、来期は「集める」に注力するべきだ」

「いや、「集める」も「盛り上げる」も不要なんじゃないか。来期は販促活動そのものをやらなくていいよ」

などなど様々な考え方がありえます。


以上、販促予算の機械的な設定方法について述べました。
しかし、実はこの方法は理論上OKであっても、実際にはこのように話は上手く進みません。


なぜなら、この方法を取るには、販促施策の中の、集める・盛り上げるの構成、重み付けについて、なぜそうするべきなのか、「根拠」が必要だからです。


「来期は『集める』に注力するべきだ」「いや、その後のフォローが重要だ」と主張をするのはいいとして、「なぜ、そう言えるのか?」という根拠が必要です。


この根拠なしに「集めなきゃ」「いやフォローしなきゃ」と主張を言い交わしても、それは「気分だけの議論」に陥ります。最悪、声がデカイ人が勝つことになります。


では、「販促施策の根拠」は、どうやって考えれば良いのでしょうか。


(次回へ続く) 


商業文の売文業で重要なこと

村中が新人スタッフによく注意するのですが、なかなか理解されないことの一つに、「文章はレイアウト、見た目がすごくだいじ」「中身が良くても見た目が悪かったらダメ。良さが分かってもらえない」ということがあります。

■ レイアウトは料理の盛りつけといっしょ

ここでいうレイアウトとは、「行間」「字間」「余白」「写真の置き場所」「漢字の多い少ない」など、文章の内容ではない「見た目」全般のこととお考えください。

村中は文章でのレイアウトとは、料理での「盛りつけ」に相当すると考えています。どんなに丹精込めて作った料理であっても、ぐしゃっと盛りつけたのでは全く美味しそうに見えません。

せっかく作った料理、ぱっと見たときに「わあ、おいしそう」と思ってもらうためにも、盛りつけはきちんとしなければいけません。これと同様に、文章も納品時に見た目を整えなければいけないのです。

(その整え方は、村中としては「端を揃える」という言い方がいちばんしっくりくるのですが、この言い方ですぐ分かってくれる人もいれば、なかなか分かってもらえない場合もあります)

■ 料理に盛りつけに、特別な才能やセンスは不要

ライターの中には「レイアウトが苦手で何が悪い」と考える人もいます。その人はおそらく「私はライターだ。文章の中身で勝負する。レイアウトはそれ専門の人がやればいい」と思っているのかもしれません。

しかし、それは作家ならともかく商業売文業の場合は不適切な考え方だと思います。「私は料理人だ。料理の中身で勝負する。盛りつけはそれ専門の人がやればいい」と言っているのと同じであるように、村中には思えます。

あるいはその人は「自分はライターであり、デザイナーではない。文章レイアウトは技術も才能もありません(努力したくもありません)」と内心思っているのかもしれません。

しかし繰り返しますが、文章レイアウトとは料理の盛りつけと同じです。特別なスキルや努力は必要なく、「常識」があればできます。

「ラーメンの盛りつけ方」というのは、どのラーメン屋でもだいたい同じ、ワンパターンです。それのマネをして、フツーにそこそこ美味そうに見せればよい。それだけです。

同様に文章のレイアウトも「常識」に従い、フツーに作ればよいだけです。特別なデザインセンスは必要ありません。

料理は見た目が大事、同じように文章も見た目が大事、と考えます。

※ 村中のレイアウト(盛りつけ)の例

バランスの悪い文章とは


 

事例制作に限らず、商業文の制作全般にいえることですが、「全体のバランスをよくする」のが重要です。小説や歌の歌詞であればバランスの悪さ、歪みがかえって魅力的ということがありますが、顧客事例など商業文でそういうことはまずありません。丁寧に端正にバランス良く作ることが必要です。しかし、これがなかなか難しい。

 

「バランスが悪い文章」とはどういうものか。細分化して考えてみます。

 

1.強調、重み付けの不調

 

文章の中で「強調するところ」「あっさり流すところ」の強弱が意味不明な場合、その強弱のリズムが読者にとって「快」でない場合、その文章はバランスが悪いと見なされます。

 

2.意味なくチカラが入っている。

 

読んでいて、妙に大仰なことば遣いがでてきて、かつその大仰さの必然性が不明な場合、つまり「なんでここで大げさな言い方するわけ?」となるとき、バランスが悪いと感じます。文章の内容と語調とに整合性がないと、読んでいて無意味に心がざわつかされるので、読者は居心地の悪さを感じます。

 

3.引いて見たときに、不自然さを感じる(何かヘン)。

 

少々、オカルトなことを言って恐縮ですが、バランスがわるい文章というのは読まなくても見るだけで何となくわかります。事例であれば、できあがり原稿をディスプレイに映してさーっとスクロールして、うん、だいたいイイじゃんと思えればOK、何かヘン、気持ち悪いと感じるならNGです。文章のバランスは、字面だけでも何となく分かります。

 

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文章のバランス感覚を考えるとき重要なことは、「基本、他人の方が正しい」ということです。バランスが悪いとは「部分部分は良いのかもしれないが、全体として見た場合、何かヘン、何だか良くない」ということであり、これは自分より他人の方がよく検知できるからです。

村中もよくあることですが、自分がどんなに確固たる方針を以て書いた文章でも、他人から「なんかヘン」と評された場合は、自分の意見はグッと飲み込んで、まずはその人の立場に立って自分の文章の「ヘンな部分」を検知しなければいけない。それも「遠くからの視点で」。

 

この「遠くからの視点」というのが重要です。書いている本人というのは自分の文章を自分なりの思想、方針、思い入れを以て、一行一行、「近く見て」書いているので、「全体」が分からなくなる。木を見て森は見えず、です。

 

そこへいくと他人様というのは、何の思い入れも持たず、文章全体をぼやーっと眺めているので、バランスの悪さというのは、ホント一発で検知してくださいます。

 

文章は書き終わった後は、「他人の目になって」「遠くからの視点で」見直さなければいけません。自戒をこめてここに記します。

 

 ※ 今回、書いたこの文章ははたしてバランスが良いのでしょうか、悪いのでしょうか、すみません、書いたばっかりの今の時点ではよく分からないというのが正直なところです。おゆるしください。

 

 

販促会議で事例の予算を取る方法

先日、既存クライアントであるソフトウエア会社から、「来期の販促予算でも事例制作を継続したい。そのために事例の必要性を上司に説明しなければいけない。しかし導入事例というのは効果の数値表現が難しい。何か、良い説明方法はないか」と聞かれました。

以下に、その時の村中が答えた内容を記しますので、同じような課題をお持ちの販促担当者の方はご一読ください。

なお「事例の営業効果が数値表現が難しい」というのは事実です。したがって私の回答は快刀乱麻を断つ、「こうすればカンタンに説明できますよ!」というようなものではなく、表面上の不利を克服するために根本のところから論を構築するという形になっていることをご了承ください。


【BtoB販促の基本公式から考える】

BtoB(法人向けビジネス)企業での販売は、企業の規模や業種、商材を問わず、その工程は必ず、「集客、追客、クロージング」の三段階に分類できます。もっと簡単に「集める・追っかける・しめくくる」とも表現できます(村中はこの言い方の方が好きです)。

このうち、しめくくる(クロージング)は営業部の担当なので、ということはマーケティング部門や販売促進部門が担当するのは「集める」「追っかける」の部分になります。

こう考えた場合、「販促施策の策定」とは、すなわち「『集める』『追っかける』の施策策定」に他なりません。ならば「販促予算の設定」とは、すなわち「『集める』、『追っかける』を、、外部の会社に費用を払って行わせるとき、どの会社ににどれだけお金を払って何をやらせるかの計画作り」のことです。


【BtoB販促で『できること』の種類はそう多くない】

この観点で販促計画を立てる時、次にやるべきことは「集める」「追っかける」の施策としての「とりうる候補施策すべて」をリストアップすることです。このときは「これがやりたい」「これがやるべき」「これをやったら効果がありそう」という観点は捨てて、「常識的に考えて実行可能な手段すべて」を列挙します。

実際にやってみると分かりますが、実はBtoBの販促手段は、種類はそれほど多くありません。「リスティング広告」、「ホームページ改善(新設)」、「パンフレット改善」、「イベント出展」、「プレスリリース」、「SEO対策」、そして「導入事例」……などなど思いつくまま挙げたとしても、おそらく30種類程度にしかならないでしょう。

この列挙は15分程度で終わりますし、一度結論が出たらもう一度考える必要のない種類の議論なので、一度、自社内でやっておくと良いと思います。

このようにBtoBの販促は、BtoC(一般消費者向け意ビジネス)のそれに比べ、「そもそも取り得る手段の種類が少ない」ことが特長です。たとえばテレビCMなど四媒体への大規模広告は、BtoB企業の大半が「そんな予算はない」で話は終わるでしょうから、考える必要はありません。

またポイントカード、クーポン券、店頭POP、新聞折り込みチラシなどのBtoCでおなじみの施策もBtoBの販促では除外してよいでしょう。

ここまで列挙の作業が終わりました。次にやることはリストアップした施策を、販促部門の目的である「集める」「追っかける」に機能別に分類することです。

(この記事、次回へつづく)

顧客事例制作に国から最大50万円の補助金が出ます(5/27まで)

東北のクライアントA社長から、「補助金を使って顧客事例を作れるよう、現在、申請中です」という一報が入りました。

「補助金は最大50万円、全国だれでも使えます」とのことでした。

以下にこの補助金の詳細を記します。

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【補助金の対象(どんな会社ならもらえるか)】
中小企業。
– 卸売業・小売業・一部サービス業 → 社員5名以下
– 宿泊業・製造業 → 社員20名以下

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【補助金の名前】
「小規模事業者持続化補助金」

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【補助金の概要(あらまし)】
販売を拡大する取り組みを行う中小企業に対しては、
商工会議所で相談しながら書類を書くと、補助金を出してもらえるという仕組みです。毎年やっているようです。

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【申請可能な内容(何をやるなら補助金がもらえるか)】
顧客事例制作費、ホームページ作成費、チラシ作成費など広告費。

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【過去の申請内容(今までどんな例があるのか)】

「インターネット販売を可能にする自社ホームページの作成」
「ホームページリニューアルおよび販売促進チラシの作成」
「商品パッケージのデザインの一新」
「トイレ及び洗面所の改修によるコミュニティー薬局の実現」
「創業2周年記念事業」
(年度不明)
 その他の事例:


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【補助金の金額(いくらもらえるか)】

・補助率 補助対象経費の2/3以内
・補助額 上限50万円

例:
・75万円以上使った場合 → 50万円まで受けとれる。
・75万円以下の場合 → その2/3の金額
      (例45万円使った場合は30万円の補助)


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【申請方法(具体的にどうやれば、もらえるのか)】

5月27日(水)までに商工会議所に必要書類を提出する必要あり。
(けっこうな分量です)

まずは、お近くの商工会議所にご相談ください。
書類作成のアドバイスなど無料でしてもらえるそうです。

商工会議所検索


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【制限事項】

すでに着手しているものについては申請できません。
※ 3ヶ月前にカスタマワイズに発注した事例制作に対しては、補助金は使えないということです。
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東北のA社長いわく、「この補助金は、地方の方が通りやすいと思います。顧客事例というと、商工会議所にはなじみがうすく伝わりにくいかもしれないので、カスタマワイズのホームページや、あるいは「事例広告の方法(http://amzn.to/k9Fa0S )」の本など見せて、説明するつもりです」とのことでした。

顧客事例制作を検討中の中小企業のみなさま、よろしくご検討ください。

「掘り下げて聞く」とはつまり何をすることなのか

 事例インタビューでは「掘り下げて」質問しなければいけないと良くいわれますが、「掘り下げる」とは具体的に何をすればいいのでしょうか。

一つの回答としては、「取材相手が、読者の常識に反するコメントを述べた場合に、それが常識に適合するまで、言語を変換、あるいは細分化していく」ということが挙げられます。簡単にいえば「聞いてて『え!?』となる話は聞き逃さず、その場で追求する」ということです。

たとえば、もしインタビューの相手が「今日、博多ラーメンを食べたんだ」と言ったあと「他のラーメンよりがっつりコッテリで、美味いよね」と言ったのなら、これは常識に適合した発言なのでOKです。

しかし、もし「(博多ラーメンは)他のラーメンよりさっぱりしていいよね」と言ったとしたら、そのときは、質問の言葉を選びつつも「博多ラーメンがさっぱりしているというのはどういうことでしょうか」と”掘り下げる”必要があります。

もしかするとその回答は「博多ラーメンって他のラーメンより麺が細いでしょ。あれがさっぱりしてて好きなんだよね」ということかもしれません。それなら意味が分かります。この場合、文章では、「博多ラーメンは、他のラーメンに比べて麺が細いところが好きだ」と書くことになります。決して「博多ラーメンはさっぱりしていて好き」など読者から見て非常識な表現を使ってはいけません。

今の例は極端なので誰でも違和感を持ちますが、実際のインタビューでは論理のほつれはもっと微妙なところにあります。

最近、弊社のスタッフが顧客事例の中で以下のような文章を書いていました。

「○○システムを導入したおかげで、コージェネレーションシステムの稼働率も前年比20%にまで下げることに成功しました」

一見問題ないようですが、私には一読どこか違和感がありました。コジェネレーションというのは、余熱でもう一度発電する方式のことで簡単にいえば「省エネ発電機」のことです。

省エネ発電機の稼働率を下げたことを誇らしげに語るのって何かヘンじゃないですか?

たとえば「需要予測システムを導入したおかげで省エネ冷蔵庫の稼働率を36%も下げることに成功しました」という文章があったら何かヘンでしょう。でも、これは次のようにいえば問題ないですよね。

「需要予測システムの導入により、冷蔵庫の稼働時間が下がり、電気料金が低減できました」

先ほどのコジェネの話ですが、実は取材に答えていた工場の人は、自社の自家発電設備のことをコジェネと呼んでいたのです。自家発電設備だったら、それは発動する回数が少ない方が、燃料費は低減できますよね。

冒頭の文章は「自家発電の稼働を最小限に抑えるために、雷予測システムを活用しています」と書き換えました。これなら常識に適合しています。

以上、たいへんややこしい重箱の隅をつつくような話に思えたと思います。しかし取材先というのは、自分と周囲にだけに通じる通称を使って話しますし、ふだん自分が知っていることは省略してすっ飛ばして話しますし、それを一般読者に理解できる常識的な言葉に直すには、細かい矛盾も見逃さず、論理がおかしい点は、確実に普通の言葉に直していく必要があります。

これが、事例インタビューでいうところの「掘り下げる」という行為です。

「本音を引き出すインタビュー」の弱点

「顧客インタビューは、取材のとき顧客が語ったことを素直に書けば良い。お客様のナマの声なのだから、その方がリアルで迫真性が出せるはず」という考え方があります。


あるいは「顧客インタビューを通じて、お客様がポロッと漏らす本音。それこそがリアルで迫真性のある最高の販促コンテンツになる。それを『引き出す』のが顧客インタビュアーの力量だ」という考え方もあります。


正直、どちらの考え方も間違っています。何が間違いかというと、どちらの考えも、「お客のナマの声」「お客様のホンネ」が、それだけで価値があるものだと思い込んでいるからです。


顧客事例とは、あくまでも「買い物で得するための(あるいは損しないための)情報を得るための実用文」「役立つ情報を体験談の形式で文章化したもの」です。そこには「買い物に役立つ情報」が書いていなければいけません。


しかし「お客様のナマの声」、「ホンネ」は、たいていの場合、根拠薄弱な、たわいもない話、「ああ、そうですか、あなたはそう思ったんですね」といった程度の話であることがほとんどなので、それをそのまま書いても読者(見込み客)に役立つ情報にはなりません。


したがって事例インタビューでは、顧客の「ナマの声」「ホンネ」を引き出そうと努力してはいけません。そもそも有名人でもない、そこらの市井の人のホンネとかナマの声とかには、読者は別に興味ないのです。


そうではなくインタビューでは、顧客の「実際に取った行動」「(行動と矛盾がない)根拠ある感想」を引き出すよう努めます。それらの情報が顧客事例を作るための「材料」になります。


しかし情報を集めただけでは不十分で、次にその情報を読者(見込み客)にとって「役に立つ話」と「役に立たない話」に選別し、「役に立つ話」だけを書くようにします。


ということはインタビュアーは、何が読者(見込み客)にとって役に立つ情報なのか、あらかじめ自分の中に「選別のための基準」を持っている必要があります。「質問して返ってきた答をただ書けばいいんだ」「ホンネを引き出してそれを書けばいいんだ」という方法が間違っているのは、「役に立つ情報だけを選別する」という観点がないからです。


何の選別も無しに、ただ「顧客のホンネ」とやらをダラダラ書いても、読者(見込み客)にとっては「とりとめない自分語り」にしか見えません。そんなものを読んでも自分の買い物の役には立ちません。「役に立たない実用文」など字面だけ見ても最悪です。そんなものを多忙な読者(見込み客)に読ませてはいけません。



どんな情報なら読者の役に立つのか、どんな情報なら役に立たないのか、その選別の基準を定めるためには「読者は誰か?」「読者はすでに何を知っているか?」「読者はこれから何を知りたいと思っているか?」について精密な認識を持つ必要があります。この認識を持つためにインタビュー前に行うのが「顧客プロファイリング」です。



今日の結論。顧客インタビューで引き出すべきは「顧客のホンネ」ではなく、「役立つ情報」です。


もし村中が20代女性向けの美容商品の事例を作るとしたら

先日、20代の女性向けの美容アクセサリーの商品を販売している会社から問い合わせ(小冊子請求)が来ました。

その会社のホームページを見ると、すでに「お客様の声」が掲載されています。これが、大変いい内容でした。

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(エリカさん、20代前半、会社員)

初めて「○○○○」やりました♪
60本付けたのに軽くて、編み込みと違ってボコボコしないし、毛質もすごくいいです☆
元々猫っ毛なので今までの○○だと毛質が違って馴染みにくかったのですが、ここの○○は毛質がとても柔らかくてしなやかなので、地毛と凄く馴染みました。ここ以外の○○○○はもう考えられないです♪
お店の雰囲気もいいですしスタッフさんも皆さん気さくな方ばかりでした。これからも利用していきたいです。

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一般消費者向け(BtoC)商品、特にファミリー商品や健康食品のお客様の声はわざとらしいものが多いのですが、これはリアル感があります。

 この文章のリアル感を支えているのは「くわしい情報」です。「60本付けたのに軽くて」、「元々猫っ毛なので」、「編み込みと違ってボコボコしないし」などの「数字」、「前提」、「他商品との比較」、これらは「実際に買って使った人しか言えない情報」なのでリアル感が増進します。

 
ためしに、この文章からそれら「詳細情報」を抜いてみましょう。次のようになります。

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初めて「○○○○」やりました♪

すごく私に合ってて、ここ以外の○○○○はもう考えられないです♪

お店の雰囲気もいいですしスタッフさんも皆さん気さくな方ばかりでした。

これからも利用していきたいです。

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文章からリアル感が消えました。また見込み客にとっての「役立つ情報」が書いておらず、ただ商品を褒めるだけの残念な文章になってしまいました。

 
もともとのお客様の声を書いた「エリカさん」は、なぜそんなにも良い文章が書けたでしょうか。村中は、その根底にあるのは「みんなにいい情報を教えてあげたい!」という女性らしい優しい心だと思います(※ これは男性が書くお客様の声にはあまり見られない特徴です)。

自分以外のみんなにももっと可愛くなってほしいから、自分の経験や役立つ情報をどんどん教えてあげたいと思うわけです。その心が根底にあるので、文章がリズム良くキラキラしています。この会社、いいお客さん、持ってますね~。

 
と感心しながら、村中はふと、「もしこの会社から村中に事例制作の注文が来たらどう作ればいいだろうか」と考えてしまいました。

これはプレッシャーの高い話です。端的に言うと、お金をもらって事例を作る立場として、この見事なお客様の声(しかも無料)に勝たなければいけませんから。


そのための方針ですが、まず女性的な共感性あふれるキラキラした文章は、40代の男性である村中に書けるわけはないので、それはナシ。別の路線を取るのが得策です。

 
その別の路線とは、ひとことでいえば「役立つ情報を、エピソードを交えて、物語る」ことになるでしょう。

 
まず「役立つ情報」ですが、美容商品というのは、女性が「キレイ」「モテ」「愛され」「許せる自分」を実現するために購入する道具です。美は女性にとって一大事ですから、非常に真剣に商品選択していると予測されます。

これは「目標を達成するための道具を購入する」という観点で見れば「大工さんのカンナ選び」「プロカメラマンのカメラ選び」と同質です。


その観点でインタビューし「役立つ情報」を引き出していけば、男性の村中でも、見込み客である20代、30代の女性にとって役に立つ顧客インタビューが作れるでしょう。


 インタビューの現場では、相手に過剰に合わせようとはしません。分かったふりをしてはいけない。男性の私がそういうことしても見苦しくなるだけです。フツーに聞く、それに徹します。経験的に、その方が確実に情報を引き出せます。

しかし、いくら役立つ情報を書くといっても、それをゴツゴツした理屈っぽい文章で書いたのでは、一般女性には読むに耐えないものになってしまいます。

そこで次の方針として「物語性」を取り込むということになります。

そもそも顧客事例とは「商品選択に役立つ情報を、先行購買者の物語を通じて、読者(見込み客)に疑似体験させるもの」ですが、一般消費者、特に女性に対しては、「情報を物語を通じて伝える」という観点は重要になります。

また「物語」という出力形態には、必ずある程度の「文章量」が必要になります。これは短文のお客様の声ではなく、顧客インタビューでないと実現できません。

さて「物語」とは何でしょうか。いろいろな考え方がありますが、必ずいえることは、「物語では、具体的なキャラクターが、具体的な行動を取る」といことです。したがって、感想や評価ではなく、行動やエピソードを書かないといけません。


ということはインタビューのときの最初の質問は自ずと決まります。女性(Aさん)にインタビューするとして、

 
「Aさんがオシャレに関心を持つようになったのは、おいくつぐらいからですか?」
 

となります。

これは村中の常套手段で、こちらスポーツクラブの事例インタビュー(http://www.s-re.jp/renaissance/voice/)のとき、最初の質問は必ず「○○さんが運動とか最初に本格的に始めたのはいつ頃ですか?」でした。これへの回答は「中学の部活からです」「小学校の頃からスイミングスクールに通ってました」「ぜんぜんやってませんでした」など様々です。

 
このように「最初の一撃」から開始し、それから現在に至るまでの変遷を時系列で丹念に追っていき、「プチ自分史」を作るような形でインタビューしていきます。


美容商品の場合であれば「Aさんの美容自分史」、カメラマンBさんに聞くのなら「Bさんのカメラマン自分史」、大工のCさんに聞くのなら「オレと大工、プチ自分史」を聞いていきます。こうして集めた「自分史情報」の中から、読者が興味を持ちそうな部分だけをピックアップし、それらを因果関係でつないでいけば、物語を形成することができます。その物語に絡めて、なぜAさんは最終的にこの美容商品に到達したのか、(カメラマンBさんはなぜこのカメラを選んだのか、大工Cさんはなぜこのカンナを選んだのか)を読者(見込み客)に伝えます。

この制作工程の場合、インタビューにおいては、所定時間内に、エピソード情報をヌケ・モレがないように聞いていくこと、ライティングにおいては、「単なるとりとめない自分語り」にならないよう、「役立つ情報」を絡めて的確に記述することが、事例制作者としてのがんばりどころ、腕の見せ所となります。

今週の事例動画 ~ 地主の財産相続防衛コンサルティング

【クライアント】
ライフマネジメント

【商材】
地主の財産防衛コンサルティング

【商材の内容】
地主さんが先祖代々の土地を相続する際に、相続がスムーズに進む仕組みを提案します。提案するだけでなく、税理士、司法書士などのネットワークを使ってプロジェクトを組み、実際の相続作業もお手伝いします。


【動画の対象視聴者】
 地主のみ

【動画本体】
(ホームページを少しスクロールすると、動画が埋め込まれています)

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 動画の出演者(取材先)が地主で対象視聴者も地主という特殊なケースでした。村中は、地主の人々の気持ちを理解するために、事前の打ち合わせ(顧客プロファイリング)は入念に行いました。

 

 今回は、出演者の肉声のリアリズムが圧倒的でした。「相続税を払うと言っても、農家だから現金はないんですね」といったセリフは当事者でなければ出てきません。

BGMにはバッハの「ゴールドベルク変奏曲」を使いました。全体のストーリーの流れや、後ろでかすかに聞こえる風鈴の音や蝉の声に、よく合っていると思います。

 

 この動画を、とある保険代理店の社長に見せたところ、冒頭20秒見ただけで「こりゃ、すごいな…」という評価でした。この社長もふだん地元の地主さんとつきあいがあります。それだけに、地主本人が出演してリアルな肉声で語っていることに驚いたようでした。簡易事例動画では、わざわざカメラを回すのではなく、通常の事例インタビューの時にICレコーダーで撮った音声を使います。これによってカメラの前で話す「よそいきの話」ではなく、高リアリズムな肉声が録れます。

 

 全体は3分とやや長めの動画です。当初は2分30秒でしたが、クライアントの松本社長と協議し、「視聴するのは大半が年配の方だから、テロップがあまり早く流れすぎると、目が追いつかない、ゆったり見られるようにしよう」という結論に達したので、全体をゆっくりさせました。

 

個人的には、出演者(取材先)のおかげで、非常に良くできた事例動画になったと考えています。